日本での金利上昇懸念の中、金利を上げられない諸事情
■ 黒田総裁の任期満了後の金利政策の行方が懸念されている
日銀の黒田総裁の任期が来年春までで、その後は金利政策の変更の可能性をみんなが懸念しているが、すぐに大幅な利上げに踏み切る可能性は低いと思います。
黒田総裁が2~3年は無いと強調している理由としては、景気が悪いのに外的要因のインフレに痺れを切らせて金利を上げてしまうと、利払費の増加で財政が圧迫されてしまうと懸念されているからです。
今は、国債の加重平均金利が1%程度なので国債費の利払費は約10兆円で済んでいますが、公的債務残高が1,000兆円を超える中、金利が1%上がるだけで利払費は10兆円も増加します。
■ 日銀が債務超過になれば「円」の信用力や日本の価値が毀損しかねない!
アベノミクスの異次元緩和で、日銀のバランスシートは2022年4月時点で738兆円、この内、国債を528兆円、その一部に「付利」と呼ばれる金利をつけ、一定の利子を金融機関に支払っています。現在はゼロ金利だからいいのですが、仮に「不利」を1%上げると、約5兆円の利子を日銀が払うことになります。
2020年における日銀の純利益(当座剰余金)は約1兆円、損失に備えるための引当金勘定などは約10兆円しかありません。巨額の利払いが発生すれば、純利益や引当金勘定などを簡単に食い潰し、債務超過になる可能性もあります。
日銀が債務超過になれば、「円」の信用力にも影響を及ぼしてしまうから、日本の価値が毀損しかねません。
上記の理由により、日銀が金利を上げることにはリスクが孕んでいる訳です。
■ 低迷が続いている日本の給与水準は何故上がらないのか?
さらに言えば、国民の支持率ばかりを気にしている日本政府が大幅な利上げに踏み切ってしまうと、住宅ローン支払いも増え、国民の生活が更に圧迫してしまうことになるので、先に給与水準が上がらないと現実的には厳しい状況があります。
バブル経済崩壊後、日本は右肩上がりの経済成長が望めなくなり、マイナス成長に陥った時期もありました。日本の賃金水準は、バブル経済崩壊後の1990年代から低迷が続いており、欧米の先進国との差が広がり、シンガポール、韓国などにも追い抜かれてしまいました。
何故日本の給与水準は上がらないのか? その状況・背景として、日本では賃上げが難しい医療、福祉、介護、保育などの分野で人手不足になっており、賃上げできるような産業では人手不足ではないことにあります。賃金を上げなくても労働者が来てくれることから、強い賃上げ圧力が働きにくい経済構造、人口構造になっていると考えられるのです。賃金格差も広がっています。
外国製品との競争、外資の日本市場参入、逆に日本企業が海外に生産拠点を移すなど、経済環境の変動が激しくなり、不確実性が増しているせいで、正社員のホワイトカラー労働者の賃金も低迷しています。
■ どこかの時点で金利を上げ、インフレが始まると、不動産が買えなくなる!
とは言え、金利はどこかのタイミングでは上げざるを得なくなってしまう日が必ず来ます。
そうなってくると、今の金利水準では買えないし、そこで恐らく様子をみる人が多くなると考えられ、物件も出てこなくなって、銀行融資も今まで以上に付きにくくなるし、どんどん不動産が買えなくなるという構造が生まれます。
ここでインフレが起こると、賃料も上げやすくなり、都心部の不動産の賃料から優先的に上がっていくでしょう。インフレヘッジ対策としても優秀で、世界的にみて最も安定しているプライムエリアの安全資産をバランスよく資産に組み入れていく事がますます重要になってくると考えています。>
弊社では上記を踏まえた上で中期長期に渡りお客様のサポートしていければと思っております。最後までご拝読ありがとうございました。